きょうと「みや古」

カレーそばは、うどんや蕎麦にあらず。<京都の平生>67

創業して82年、三条大橋の近くで営まれている、街のうどん屋さんである。
名物は、肉入りカレーうどんだが、今日はうどん前でビールを飲んでから、カレーうどんをいただくことにした。板わさとお新香をつまみにビールを飲みながら、さて何にしようかと思案する。
店内を見渡していると、「復活裏メニュー、自家製中華麺 肉入りカレーそば」という張り紙があるではないか。があるではないか。
これはもう、「食べろ」という天啓である。
そこで、具を鶏肉に変えてもらい、カレーそばをお願いした。
だが不思議なのは、京都のうどん食堂には必ずある中華そばがこの店にはないのに、自家製中華麺はあるということである。
カレーそばのためだけに、自家製中華麺を作っているといるのか。
運ばれたカレーそばは、ご覧の通り、うどんでも蕎麦でもない。れっきとした中華麺である。
だがつゆは、カレーラーメンのそれではなく、カレーうどんの和風甘辛つゆとの出会いなのである。
ひとくちめは、妙な違和感があるが、二口、三口と食べ進んでいくうちに、この料理の沼にハマっていく。
なによりつゆがよくできている。
甘じょっぱい、うどんつゆとカレーが丸く馴染んだ穏やかな味わいで、今まで食べてきたどのカレーうどんつゆとも違う、魔力がある。
魔力と言っても、強引なうまさではない。
お昼ご飯にカレーライスを食べましたという和装の麗人といった趣で、どこまでも自然なのである。
そんなつゆを、中華細麺は受け止め、つるると口元に登ってくる。
結局は、つゆを全部飲み干してしまった。
おそらく、しばらく経って思い出すと、またここに来ちゃうかもしれない。