カツサンドではない

食べ歩き ,

カツサンドではない。
ハムカツサンドである。
加藤牛肉店のハムカツサンドはご馳走であった。
噛めば、ハムが、肉肉肉と主張して、歯を包み込む。
むむむむっと、肉感的に舌を凌駕し、これはうまいぞとつぶやかせる。
しかしおじさんは、あの薄いハムカツに郷愁を感じてしまう。
これは十分に、いや十二分にうまいのだが、あの懸命に舌で弄らないとハムがどこにいるのかわからない、薄いハムカツサンドが恋しくなる。
ハムと名乗りながら、ソーセージじゃないかという、名称詐称問題。
ハムカツと名乗りながらも、カツの方が厚いじゃないかという、誇大表示問題。
それらをすべて許容し、社会矛盾や不条理を飲み込んで、ハムの存在をまさぐる。
ああハムがいた。
君はそんなところにひっそりと隠れていたんだねと、出会いの喜びを謳歌し、自らの努力も評価してやる。
どうやら、これだけは譲れない。