アワビの肉体に吸い込まれる

食べ歩き ,

「大きなアワビが手に入りました」。
そう言って、シェフは子供のような笑顔を浮かべられた。
佐渡島のフレンチ「ラプレージュ」の須藤良隆シェフである。
分厚い身に歯を立てると、ズブズブとアワビの肉体にはが吸い込まれていく、
その瞬間、佐渡島の澄んだ海の滋養が、すうっと舌に流れていった。
佐渡島に昆布はないので、ワカメを食べて育ったアワビは、淡い味の中に海の神秘を隠している。
肝ソースをたっぷりからめていただけば、豊かな気分が膨らんで、僕らはゆっくりと海の底へ沈んでいった。

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