今回の旅は、アイヌの食文化を学ぶのことが、目的だった。
もちろん、今回だけで識るとは思っていない。
だが我々ヤマト民族にとって、先住民のことは、あまりにも知らされていない。
本も読んで予習したが、どうしても書籍化されたものは、偏向情報が紛れ込む。
実際に口伝された話を聞きたかった。
うかがったのは、御年80歳になられるアトイさんである。
最初にアトイさんは言われた。
「これから話す話は、私がおじいちゃんやおばあちゃんから、何度も何度も聞かされてきた話です。聞くと、途方もない話に聞こえるし、世に伝えられている話とは違います」。
その話は、いずれも本には書かれていない、AIもまだ学んでいない真実だった。
「アイヌのことは、まだ研究が足りていません。特に食文化と哲学に関しては足りていません」。
そう言って、寂しそうな顔になられた。
口伝されたアトイさんのおばあちゃんは、97歳で亡くなられた。
明治の女性であるから、長寿である。
しかしアイヌの人々は「まだ若かったのに」という。
当時老人の寿命の平均は、百歳だったという。
それでも老人になって、ガンになった人の話も聞いた。
すると老人は必ず同じことを言ったという。
「ガンが私の体を気に入ったのかい。住み心地がいいなら、ずっと澄んでいていいよ」と。
中には転移して余命宣告される方もいた。
すると彼ら彼女らは、同じ言葉を言ったという。
「ガンが心中したいという。そこまで惚れられるなんて、私は幸せだあ」と。
狩猟採取を続けてきた民族は、戦さもなく、かくもおおらかに生きてきたのである。
またアイヌの言葉には「ゴミ」という言葉がない。
自然に属すものをお借りし、利用してきたアイヌの人々には、ゴミという概念がないのだった。
アトイさんが持っているものの写真は、ダイニングの上にかけられていたものである。
「鮭の皮を干しているのですか?」と聞くと
「いや身もあるよ」と、いう。
触ると微かに身もある。
なん と10年干しているのだという。
そのため身も乾燥して細くなっていく。
これを小さく切り、煎じて飲むと、免疫力が高まるのだという。
一番よく効くのは尾で、これは希少ゆえ必ず老人に飲んでもらう。
そのほか、驚く事実は数多く語られた。
その話と、実際にいただいたアイヌ料理の話は、また後日。







