やはり僕はマゾだった。
ラオス ビエンチャンのフレンチレストランで、よせばいいのに挑戦したのである。
この地は以前フランス領であっただけに、フランス料理屋が多い。
その中で、ここが一番と言われる店を目指した。
中のサービスはラオス人で、見渡すとなぜか奥にピザ窯がある。
不安がよぎったが、後から「ボンジュール!!」と、フランス人客の団体もやってきたので、まあ大丈夫でしょう。
メニューが豊富である。
肉料理、魚料理が各20、ピザもパスタもある。
ステーキ緑胡椒ソースかクスクス、あるいは牛肉の赤ワイン煮込みが無難だなと思ったが、ここで知的好奇心が暴走した。
「マグレドカナール・オー・カルバドス・エ・オー・プリュノー」。
鴨のロティ、カルバドスとマリネしたプルーン風味というのを頼んでしまった。
ついでに海がない国なのに「スープドポワソン」まで、頼んでしまった。
まず「スープドポワソン」が運ばれて来る。
一口スープを啜って、笑った。大いに笑った。
煮干しをつぶした味しかしない。
あの道端で売っていた干し魚を潰して煮出した味である。
日本的で作るならば、はらわたも頭も取らない煮干しとアジの干物で出汁を取り、そのまま煮込んだ野菜と共に、ミキサーで潰した味と言えばわかるだろうか。
偉大な味だった。
そして鴨料理がやってきた。
見た目は問題ない。
一口食べて、やはり笑った。
なんだこれは。
鴨が固いのは許しましょう。
しかしソースが理解を超えている。
どこにカルバドスがあるのか?
この中途半端な甘さはなんだろう?
ソースの味を表現するなら、プラム風味グミの味である。
ケミカルなグミをすりつぶしたソースが、鴨にかかっていると考えてほしい。
プラムは皿上に、はっきりと確認できるのに、プラムではなく、グミの味なのである。
ああ、ここまでまずいと笑うしかない。
いやあ。まずいものは勉強になる。