もっちゃり

食べ歩き ,

「炊き合わせは、もっちゃりしていないとあきません。金目のものを入れたらあきません」。
そう森川さんは言われて、炊き合わせを出された。
もっちゃりとは京都弁で、もっさりともいい、垢抜けない様をいう。
鄙びたというか、いい意味で田舎くさい、実直な味わいでなくてはいけないことなのだろう。
小鉢には、炊きたての湯葉と麩のオランダ煮、卵と閉じられたばかりの百合根の菜種煮が盛り合わせられていた。
ゆり根は煮崩れる際まで炊かれ、噛もうとすると、ほろりとほどけて、柔らかい甘みを舌に広げる。
卵の甘みは勝つことなく、そっとゆり根の滋味を称えている。
湯葉の柔らかさと静かな甘み、麩の食感もすべて、ゆり根を輝かすためにある。
もっちゃりとした垢抜けない食材だけで、垢抜けた料理を作る。
これこそが料理の品格である。
京都「浜作」にて。