Potxas!

食べ歩き ,

もしスープを飲むためだけに、旅をすることができるなら、僕はドノスティアに向かう。
「Ibai」に入って、「オラ!」とお母さんとおじさんに挨拶してダイニングに降りる。
そして注文を取りに来た老練のシェフに、スペイン語もできやしないのに「uno Potxas!」と、頼むのだ。
白インゲン豆と野菜のスープ。
ただそれだけである。
それだけなのに果てしなく、慈しみ深い。
それだけなのに、限りない力を与えてくれる。
豆は、甘さを通り越した包容力があって、野菜たちの営みを受け止める。


一口飲んだだけで、平和が訪れる。
一口飲んだだけで、愛が通じ合う。
一人でも大勢でも、人間の心が繋がっていることを信じられる。
スープを超えた安寧がある。