もう30数年、牛の内臓を食べてきた

食べ歩き ,

もう30数年、牛の内臓を食べてきた。
極め、というものもなんども食べた。
しかしこんな小腸もミノもギアラも食べたことがない。
小腸は脂がほとんどなく、噛むと、なぜかイカのような香りが漂う。
ミノは、貝のようなサクッとした食感は、上質なミノと同じだが、芯にどこか人間には心許さないゾという野味があって、コーフンさせられる。
一番驚いたのがギアラで、脂がほとんどない。
しかも皮が分厚く、人間の咀嚼力が試される。
噛んで噛んで噛みなさい。そう肉から叱咤されて、噛みこむうちに、草のような青い香りがふっと流れ出る。
広大な土地で完全放牧され、自然分娩で母牛に育てられ、無農薬の草を食べたい時に食べたいだけ食べて育った牛の内臓である。
健全なる肉体の内臓とは、こういうことなのである。
今まで脂の多い、甘っちょろい内臓に喜んでいた自分は、浅はかだった。
牛を食らう。牛の命をいただく意味がここにはある。
ジビーフは、日本でほぼ唯一としての(後は北里大学で飼われている牛)有機JAS認証を獲得した。
牧場、牛一頭一頭、と畜場までの運送、と畜場での処理、屠畜後の分別方法、肉屋までの運送。肉屋での処理、陳列方法。
すべてにわたって基準を満たしていないと獲得できない、非常に厳しい認証を得ることができた。
自然という言葉を我々は安易に使うが、その意味を諭してくれる牛である。
そして食べるたびに、命を絶って命を育む、「食べる」意義と意味をを教えてくれる牛なのである。