もうワゴンデセールもプチフールもいりません

食べ歩き ,

「もうワゴンデセールもプチフールもいりません。お腹に入らないということではなく、この味わいの余韻を、ずっと楽しみたいのです」。
「レカン」の「クレープ・シュゼット」を食べたお客さんが、以前こんなことを言ったという。
19世紀末、エドワード7世の為にアンリ・シャルパンティエが考案したと言われるこの菓子を、今でもこの店は大切にしている。
熟練の給仕人が、お客さんの目の前におかれたゲリドンで作るそれは、他のクレープ・シュゼットとはまったく違う。
伝統のレシピをなぞりながら、様々なアイデアを組み合わせ、深化を遂げている。
書きたいことは沢山あるが、言わない。
言葉にすることが、言葉にするほどウソになる、夢見心地があるからである。
それは、レストランのデセールというものが、かけがえのない時間を提供してくれる料理であることを証明している。