まごうことなき

食べ歩き ,

「カンテサンス」の一皿から「サパン風味のアプリコットソルベ」
 アプリコットソルベの上に、樅の木の若芽を漬け込んだアルザス地方の薬草酒、サパンのグラニテと木のカレンデュラ(キンセンカ)の葉を飾ってある。
ソルベを一匙、口に入れた一同は、目を丸くしたまま見つめ合った。
途端に顔が輝き、崩れ出す。
まごうことなき、我々の知っているアプリコットである。
しかしあのアプリコットがアプリコット以上にアプリコットなのである。
香り、甘酸っぱさ、滑らかな果肉、それぞれが単に、濃く、凝縮されているのではない。
果物の自然なありようのままに、濃密になっているのである。
それは我々の記憶にあるアプリコットへの思慕を、増幅させていく。
アプリコットをあらためて、深く、愛してしまう。
そんなソルベである
そしてサパンの苦みや、カレンデュラのほろ苦みや華やかさがアクセントして、胸をときめかす。
ああ、願うなら、こんな朝に一匙下さい。