ほろほろ鳥は

食べ歩き ,

ほろほろ鳥は、火を入れられたことに気づいてないのだろう。
皮には、焼けた香ばしい香りがついているが、肉はどこまでもしっとりと、歯に優しい。
鉄板の上で、骨から火が通るように角度をこまめに変えながら4時間焼いた。
噛みつくと、しなやかな筋肉がふるると躍動して、口に入り、柔らかな甘みが滴り落ちる。
はかないような、たくましいような、切ないような、凛々しいような、そのすべてのような。
命がはらむ多様な甘みが、舌の上で踊っている。
僕らができることは、大きく笑い、「うまい」と叫ぶことだけだ。
初台「ANIS」にて。