「リード」「アトラス」「ミンスター」。
「バハムート」「イフリート」「ルーク」、「ビショップ」。
「チェックメイト」「ペルセウス」「アルデバラン」。
「カッシーニ」「ノルディック」、「アトランタ」。
「ソロモン」「アスパイヤー」「アクティオン」「ディンプル」。
「ブライトン」「ノーベル」「プログレス」。
「カイト」「クロノス」「アトランタ7」。
「パンドラ」「プラトン」「リビエラ」「ミラージュ」「オシリウス」。
ポケモンのモンスターの名前ではない。海外の地名や偉人の名前でもない。星座名やギリシャ神話でもない。
すべてほうれん草の品種名である。
ほうれん草の名前は、なぜか日本語名が少なく、妙な名前がつけられていたのである。
ちなみに日本名を「サカタのタネ」の販売ページで見たところ、「豊葉」「まほろば」と「日本ほうれん草」しかなく、「住友化学」は皆無であった。
つまり我々は居酒屋で「ほうれん草のおひたし」や「ほうれん草の胡麻和え」を食べているつもりが、「バハムートのおひたし」や「アルデバランの胡麻和え」を食べていたのである。
品種にはそれぞれ「暑さ寒さに強い」。
「生食してもアクが少なく、サラダでも食べられる」。
「寒さに強く、土壌適応性が広い」。
「べと病(露菌病ともいう植物病害)に強い。
「トウ立ちが遅い」。
「早春~初秋~冬まき用」。「夏と夏~秋まき用」。「早春~初夏まき用」。
「濃緑色」。「肉厚で光沢と欠刻のある葉は、横に広がらず収穫が簡単」。
「株張りがよく多収品種強度の萎凋病耐病性」。「べと病R−1~7抵抗性の極濃緑剣葉低温伸長性にすぐれている」などといった特性がある。
どうやら命名は、開発担当者のノリでつけられているらしいが、どこか凛々しい怪獣系の名前が多いのも、苦労して開発したタネが、売れてほしいという願いからだろう。
ネットでも話題となり、ほうれん草の名前は、中二病であるとの書き込みがなされた。
つまり、中学校2年頃の子供にありがちな、自分をよくみせるための背伸びや自己顕示欲と劣等感を交錯させたひねくれちほ物言いなど、思春期特有の不安定な精神状態による言動ではないかというのである。
タネを開発したおじさんたちは、決して中二病なんかではない。
聞くところによると、「バハムート」は、病害への抵抗性が高い上に茎が折れにくいため、神話の怪獣・バハムートから命名された。
また「イフリート」は、耐暑性が抜群という特長から、炎の魔獣として知られるイフリートに結びつけた。
どうやら色々な野菜の中で、ほうれん草は特に怪獣系のカタカナ名が流行り、後の命名も追随していったようなのである。