そばのお作法。
隣には、中国人男性の二人組がいた。
どうやら「掻き揚げ ざるそば」を頼んだ模様。
「掻き揚げ ざるそば」が登場。 すると件の二人、
1、ざるを持ち上げて、下の皿を眺めた。
2、猪口に入ったつゆの匂いをかぐ。
3、そばをまずそのまま数本食べた。
{おっ、通か} と思ったのもつかの間、ネギをそばの上に全部ぶちまけ、さらにつゆをドレッシングの如くたらたらとかけ始めた。
「そうじゃないだろう、隣でざるうどん食っている奴を、今すぐ見習うんだ」。
二人には、そんな心の叫びも届かない。
よほどキツネをやめて、ざるそばを頼み、自ら食べ方を実践指南して、日中友好に貢献してやろうとかも思ったが、人間はどのように学習していくのか、見守ることにした。
1、掻き揚げはそのまま齧っていたが、ちぎって食べるようになった。
2、掻き揚げを猪口のつゆにつけた。
3、そばにかけていたネギに、どうも違和感を感じたらしく、再び小皿に戻すも、全部拾いきれず。
4、そばを食べながら二人で協議。
「味がぜんぜんしねぇな」。
「ソースかけても、ざるから下に落ちちゃうしな」
「こんなもんか」 おそらく。
5、つゆをネギの小皿に投入。そこにそば浸けるという、至難の技を生み出す。
6、すすっても味がしないのだろう。小皿に少しだけ浸かったそばの部分を取り出して高く上げ、口に落としいれる。
7、再び協議。
「これ腕が疲れるな」
「時間かかるな」
「日本人は忍耐強いと聞いてきただろう」 おそらく。
8、ついに一人が、猪口につけることを発見。 パチパチ。
だがそばの残りは数本しかない。