その皮は儚く、どこまでも軽やかだった。

食べ歩き ,

さくっ。
その皮は儚く、どこまでも軽やかだった。
今まで出会った北京ダックの皮は、バリンッ。もしくはカリリと弾けていった。
しかしこの皮は、違う。
春巻きの皮より脆く、その健気な食感はパイ皮のようでもある。
歯に力を入れずとも割れるほど薄いが、命がみなぎった存在感があって、その余韻が皮下の甘い脂とともに広がっていく。
最初は巻かずに、桂花をまぶした砂糖をつけて食べる。
砂糖の甘みが脂の甘みを呼び、桂花のエレガントな香りが、皮の繊細を華やかにする。
餅に挟む時は、醬を少量にし、ネギと胡瓜の量も慎重に選ぶ。
餅に皮を下にして載せ、胡瓜とネギを乗せ、醬を垂らし、キュッと巻く。
後はゆっくりと噛んでやる。
そろりそろりと口を動かす。
そうしてこそ、皮も脂も笑ってくれる。
上海DADONGにて