その木刀は、普通のものより長く134cmもある。
反りが殆どない直刀の重量は780gあり、前方に重心があるため、相当の鍛錬になるという。
突きの名手であった持ち主は、かなりの激しい稽古をしていたようで、先端部分と左側面に多数の打突の跡があり、柄の部分も何度も強く握ったせいか、指の形に沿ってへこんでいるように見える。
坂本龍馬愛用の木刀である。
木刀は龍馬の脱藩後、藩校、致道館内の道場に保管されており、明治になって致道館が取り壊されると、元藩主の山内家に所蔵されていたが、明治30年代頃、山内氏自ら木刀に「贈正四位 坂本龍馬君之遺品」と刻字し、高知市五台山の、志士たちが祀られている護国神社に奉納され、社宝となったという。
握らせていただいた。
蹲踞からゆっくりと木刀を振りかぶる。
深呼吸をし、気を整え、御神殿に向かって、何度か素振りした後、気を放つように、集中して静止する。
闇。
冷ややかな山の空気の中で、鳥の声と雨の音しか聞こえてこない。
静止して目を閉じ、1分経った頃だろうか。いやあれは5分だったのか。
突然が熱くなって、汗が出た。
閉じた目の下辺りに微かな明かりが射す。
何分経ったか分からないが、これ以上というところで目を開けた。
恐らく室内は、19度くらいだというのに、全身汗だくである。
今考えると、汗とともに余計な気と毒が、放電されたのではないだろうか。
護国寺から離れる際、体が軽くなった気がした。
有名な通信会社社長は、木刀を握って号泣したという。
この木刀の存在は、高知県民でさえ知っている人は少ないと聞く。
しかし木刀は、多くの人に触れられたがっているのではないか。
高知に出かけられたら、ぜひ会いに、握りしめにいってほしい。
その木刀は
日記 ,