ずずん

食べ歩き ,

ずずん。
その肉は一噛みした瞬間に、地鳴りがした。
心臓の鳴動が味の中にあって、体を揺さぶるのである。
どどうっ、どどうっ。
噛めば噛むほどに、肉汁が流れ出す。
しかしこの肉のエキスは、我々が知っているものではない。
脂の甘みがなく、かといって鉄分の味だけでもない、純真な命の滴りにあふれている。
食べるごとに、噛むごとに、牛の精気がポンプで送り込まれて、気分が高まっていく。
命を食べるとはこういうものか。
これほどまでに、壮絶な味わいなのか。
もうフォークを使うのももどかしく、手づかみで食べた。

北海道駒谷牧場の完全放牧野生牛「ジビーフ」のグリル。