すっぽん さ く ま 

食べ歩き ,

赤坂の閑静な裏路地に佇む、堂々たる日本家屋。風格漂う門を潜り、女将に出迎えられ、時が染み込んだ座敷へと案内される。
すっぽん専門で  年。座敷に落ち着き、突き出しを肴に酒を飲んでいると、鉄分あふれる生き血とともに、猛然たる湯気と音を立てて鍋が運ばれる。 鍋は二千度という高温に数十年耐え抜いた信楽焼き。鍋の中では、スープがふつふつと沸き立ち、すっぽんの肉塊が食べ手を誘うが如く揺れている。 扱うのは、浜松舞阪の五〜六年もの。ブリッと音が立つかのような逞しい歯応え、一切れ食べただけで唇に粘りつくゼラチン質、そしてかみ締めるほどに滲み出る深い滋味。スープも、すっぽんの凛々しい滋味に合わせるよう、生姜、酒、醤油など強く、すっぽんの脂分と合わさって濃厚な味わいである。 高級店だが、親子三代に渡る女将の接客が、なんとも和ませる。

 

2016年閉店