すごい「ゆべし」

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すごい「ゆべし」だった。
先日観光庁主催「世界に通用する究極のお土産」の審査員をやらさせていただいた。
2時間で100種を試食するというハードな審査だったが、こういうコンテストの出品にありがちな、「味が濃い、甘すぎる」という品がない。
いずれも食材の風味に忠実な優しい味なのである。
ベスト10にも選ばれず、「世界に通用する」という観点から、僕自身もはずしたのだが、ずっと心に引っ掛かり続けているのがこのゆべしである。
島根県奥深い中国山地にあるゆずの里で、おばあちゃんが作り続けているゆべしである。
砂糖に頼らず素朴で、食べると柚子の持つ力がにじみ出てくる。
そば、味噌、唐辛子が柚子と渾然となって、目の前に里山が現れる。
朴訥な命の素晴らしさが伝わるゆべしだった。
少し長くなるが、つくりてのおばあちゃん(当日もお話しさせていただきました。恐らく80代後半)が書かれた文章を載せる。
「金谷にようけ人が住んどった昔は、毎年寒さが増し、雪が降り出すころに、皆で少ない柚子の実をわけおうて、どこの家でもゆべしが軒下に連なる光景が見られたものです。
今では金谷も、女性三人の集落となってしもうて、その光景も私の家でしか見られんようになりました。
柚子とかかわって三十数年、今でも昔から伝えられてきた伝承本ゆべしの味を後世に伝えようと思うて作り続けとります。
軒下に吊るされたゆべしは、寒風にさらされゆっくりと春を待ちます。”伝承ゆべし”が熟成され琥珀色に変わるころには、樹齢700年超える金谷城山桜が満開となり、みなさんが来んさるのを待っとります。
かしこ
篠原演子」
美都物産金谷農産加工場
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