もっと美味しい出汁はあるだろう。
もっと香りのする麺もあるだろう。
だがこれでよい。
見よ、この佇まいの美しさを。
京都「殿田」の「すうどん」である。
控えめな出汁と醤油にやわやわなうどんに、ネギの歯応えが、シャキッとクレッシェンドで対峙する。
今日は、カレーライスを追加した。
「ご飯は半分で」とお願いしたが、これはどう見ても半分やない。
「ご飯半分になってますかね？」と、運んだきたおばちゃんもいうていた。
すうどんを食べ、カレーを食べる。
淡い味わいと、濃く刺激的な味わいの対比が、互いの良さを高めていく。
途中、うどんのネギをカレーに落とし、つゆを少し落とした。
うん。
ほんのりまろやかになって、これもよろしおますな。
途中、うどんを数本、カレーに参加させた。
うん。
カレーうどんでもカレーライスでもない、弱々しい味わいが、よろしおますな。
ひとり静かにカレーとうどんを楽しむ。
普通のありがたさが、ゆっくりと染み渡っていった。