これが幸せと言わずしてなんと言おうか。

食べ歩き ,

ご飯をいただいた後に出されたのは、神亀のお燗だった。
平盃に注いだ酒は、うっすらと黄ばんでいる。
盃を持ち、ゆっくりと口に運ぶ。
酒にそっと口づけすると、甘い香りが広がった。
キャラメル香とバニラ香が抱き合って、口の中で揺らめく。
酒が突然粘度を増したかのように、てれんと舌に甘える。
ふう。
これが幸せと言わずしてなんと言おうか。
米の奥深いうまみが、心をふくよかにしていく。

小川はな食堂での、燗酒師水原マサさんの魔術