この目が、おいしいを生んでいる

食べ歩き ,

この目が、おいしいを生んでいる。
ひと時たりとも緩まぬ父親の眼力を、息子は受け継ぎ餅を焼き、母親は優しいまなざしで生地を練る。
肉まん担当の父親は、常に生地の焼け具合を見ながら、取り出して配置を変え。取り出しては裏返す。
一分間に約15個の様子を見ているので、一時間で90回 朝5:30からの6時間で540回同じ作業を続けていることになる。
彼の人生の中では恐らく、150万回以上続けているのだろう。
焼き上がった肉餅は、焦げの具合が均一で、パリンとした皮と噛み応えのある肉あんとの対比が美しい。
息子の野菜餅も表皮がパリッとしているが、より軽く、割れば上質のクロワッサン(と言う表現は肉餅に失礼かと思うが)のように、何層にもなった生地と空洞が浮かび上がる。
決していい油を使っているわけではないが、油っぽさは微塵もない。
甘い味付けの甜餅も、密かに入ったアミが緩やかなうま味を膨らます、白子生姜効いた大根餅、あるいは卵を挟んだ焼餅蛋も楽しい。
あとは、昔ながらの微かな焦げ臭が漂うシンプルな豆漿を頼み、餅と交互に食べる。
ドプッと、油條を豆漿に浸して食べる。
豆の香りが体に満ちて、静かな朝から賑やかな昼へと、頭が巡る。
台北、青島豆漿店(チンダオドウジャンディェン)にて。