不忍池のふちに茶屋がある。
なんでも夏季限定で、東京都がやっているらしい。
題して「蓮見亭」。
雄大な蓮を眺めながら、一献やろうって算段だ。
席に座れば、クーラー無しでも、池から涼風さわさわと。
弁当とお酒のセットで千円なり。
桟敷越しに見る蓮池は、この世のものとは思えぬ壮大さと不気味さで
来る人すべてを圧倒する。
蓮池のかなたに、浮かぶように光るは弁天堂。
蓮は、世の悲しみと無念を飲み込んで、じっと黙ってこちらをうかがっている。
睨み返せば、無常となって忍び寄る。
もし周りに人がいなかったら。
一人でここにたたずんでいたら。
手招きする蓮に恐れ抱いて
冷酒をぐびりと飲み込んだ。