少しだけ天国に近づきました

食べ歩き ,

この三ツ星レストランの話を始めるときに、この話から初めてはいけない思う。

しかし、どうしても触れたくなっちゃった。
アミューズ、前菜、主菜二皿を食べ終え、散財し、もうデセールは食べられません。でも折角だからと、二人で一皿を頼んだ。
夢のようなアヴァンデセールと、グレープフルーツの様々な魅力が弾ける、スペシャリテのデセールをいただき、もうチョコレートも小焼き菓子、プチフール類は、出されても食べられません。断念します。と言っていたところに、いきなり登場したのが、これである。
いきなりの、唐突なるクィニーアマンである。
「私クィニーアマンが好きで好きで、よく作るんです」という、連れの料理の先生も手が出せずに、ため息をつきながら包んでバックに入れようとしている。
しかしここで食べな、男、いやタベアルキストがすたると、食べた。
ああ。こんなに完璧なクィニーアマンには、出会ったことがない。
焦げる寸前まで焼かれた、表面の香ばしさ。
歯を入れた瞬間から、パリン、ハラハラと舞い踊る生地。
中心のしっとりとして、滑らかに唇に頬ずりする生地。
豊かな、極めて質の高いバターの香り。
十二分に甘いのだが、気品のある甘さに留めた調和の良さ。
そして、少し温かい。
食べながらぼくは、少しだけ天国に近づきました。
パリ「ル・サンク」にて。