ここにも肉焼きの才がある若者がいました

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ここにも肉焼きの才がある若者がいました。
長崎「ハルビン」の久保田太一シェフです。
フランス料理を修行し、今は1959年に祖父が創業し、父が繋いだロシア料理店の三代目として奮闘しています。
品格のある、やさしい味わいのボルシチも素晴らしかったのですが、主菜に用意してくれたのは、純血デュロック種の豚肉でした。
骨つきのまま四週間寝かし、塩をして、僕らが12時に食事に来るのに合わせ、朝8時から仕込みをし、9時から焼き始めていました。
一面ロゼ色に輝く肉にナイフを入れれば、ナイフが吸い込まれうように入っていく。
口に入れれば、きめ細かい肉を前歯が断ち切り、奥歯がギシギシと音が立つかのように噛みしめる。
微かな鉄分の酸味を感じさせながら、甘い肉汁がこぼれ出します。
しかしそれが、とどまらない。
肉のが口の中が小さく小さくなって、最後の一片になるまで、凛々しい味わいが駆け巡る。
そしてその肉の余韻だけで、ワインが飲める。
「きちんと焼けてる」証ですね。
そして脂は、サクッと音を立てるかのように、軽快に前歯が入っていく。
それでいながら、何事もなかったかのように、甘い香りを放ちながら消えていく。
しかも新保さん、ご覧の通り、二層ある脂の層がくっきりと焼き分けられている。
感動を歌えると久保田さんは、「いやあまだまだです。勉強しなくたはいけないことがたくさんあります。お客さんに毎日助けてもらっています」と、言われた。
長崎ということで、苦労なさることはあろう。
しかし、常に食材を探し求める熱意とそれに対する敬意、そして誠意を持って料理に取り組む姿勢は伝わりました。
久保田シェフ、また来ます。