おいしさの経験値。

日記 ,

おいしいか、おいしくないか。
それは絶対値ではなく、個人差である。
その個人差を生み出すものは数多くあるが、最も影響するのが、経験値であると思う。
たとえば回転寿司で十分満足していた人が、ある日、回らない街の寿司屋のカウンターで食べて、いたく感動したとしよう。
その人は、もっとおいしい寿司を食べたくて、様々な寿司屋を巡る。
一年後、最初に行った街の寿司屋に再び行く。
するとあれほど感動していたのに、感動はなぜか、浮かばない。
それは経験値が増えたからに他ならない。
さらに経験値を増やすと、一流と言われる寿司屋の中でも違いがわかり、さらに町寿司も、町寿司としての良さを許容できるようになる。
経験や場数を積むことによって、自分のスタンダードが変わっていくのである。
この本は、普通の方より食の経験値が高い五人が、喧々諤々、談論風発して新しいレストランの魅力を語った、他に例のないガイドブックである。
面白いのは、互いの経験値は高いが、それでも意見が分かれるところである。
同じ店で五人の評価が一致することもあれば、今回は特に、意見が真っ二つになることもあったので面白い。
これはこの本ができてから、今回が一番顕著ではなかったかと思う。
つまりそれだけ、話題の高い新たな店が多かったということでもある。
もちろん5人全員同時に行ったわけではないので、店のコンディションもあろう。
しかしそのこともある程度鑑みながらの議論だから、なおさら白熱した。
ぜひその辺りを深読みして欲しい。