滋賀「う嵐」

うなぎと霜柱。

食べ歩き ,

鰻にウロコはない。
魚のウロコを想像する人はそう思うだろう。
だがあのぬるぬるした皮の下に、鱗が埋もれているのだという。
この白焼を食べた時に感じたのはウロコである。
甘鯛の松笠焼きのような、パリパリとしたはかない食感だった。
実際はウロコではなく、筋肉の繊維が立ち上がったものであったのだが。
それは特殊な焼き方から生まれた。
店主曰く、技法の名前は、「おのれ蒸しエアリー2.0」という。
説明によれば、鰻を丸めて焼くと、両側のヒレが焼きしまっていく。
90度になると口が開き、対流ができる。
焼き上がってエリを切ると、熱が一気に入って、筋繊維が立っていくのだという。
僕の頭では、さっぱり理解できぬが、食べた瞬間に目を見開いた。
鰻に歯を立てると、霜柱を踏んだかのように、パリパリサクサクと細やかな音が立ち、その後に柔らかな身に歯が包まれる。
ふわりと脂の甘い味わいが舌を包む。
サクサク、ふんわり。
噛んだ瞬間の食感との対比が激しく、鰻という生物の神秘を感じる。
エネルギーがぶつかってくる。
一億年前からしぶとく生き抜いてきた執念がある。
店主がうなぎの生態を熟知し、身体構造を調べ尽くし、独自の焼き方を編み出した、唯一無二の味わいである。
だが、新たな焼き方を生み出しても、現状に満足せず、もっと良きやり方はないかと試行錯誤してきた職人が編み出した味わいである。
鰻もしぶといが、人間の追求心もしぶとい。
だから次回訪れると3.0となり、新たな焼き方も出てくるのだろう。
そう思うと、もう、居ても立っても居られない。
滋賀「う嵐」にて。