黒いダイヤモンド

食べ歩き ,

ある人は、「黒いダイヤモンド」と呼ぶ。

それは、運ばれてきた瞬間に嬌声が上がる。
赤黒く、艶やかな球体から、渾然と甘い香りがゆらめき、顔を包む。
ああ、もうだめだ。
目の前に置かれただけで、顔は崩れ、体が弛緩し、よだれが溢れ出す。
かつて尻尾をここまで昇華させた料理があっただろうか。
ナイフを入れればほろりと崩れ、口に運べば、コラーゲンの甘みと牛肉の滋味が広がり、赤ワインの深みが交じり合う。
一口で中空を見つめ、無言となって、動けなくなる。
その圧倒的な味の輝きに、官能がゆさぶられ、翻弄される。
「コートドール」の「国産牛の尻尾の赤ワイン煮」。

やはりこれはダイヤモンドなのである。