〜豚ちまきの謎〜(長いですが、写真と一緒に見てね)
ミャンマーにもタイのネームのような、豚肉の熟鮓がある。
そう聞いた一行は、豚熟鮓を求めてシャン州に入った。
「それを作っているおばちゃんがいて、見せて来るらしいで」というので、ニャウシャンシェにある家に向かった。
確かにおばちゃんはいた。
しかし、もう作った後だという。
バナナの葉に包まれたそれが、うず高く積まれている。もはや
「もう一回作って」とは言えない量である。
おばちゃんは、ちまきの中を見せてくれた、
ラードが乗せられ、赤く染まった米は豚ひき肉を混ぜたという。
「ひき肉だけでこんなに赤くなるの?」と思った一行だったが、「これは塩と米と豚ひきだけや」と言い張るおばちゃんを前にしては何も言えない。
これを長時間蒸して仕上げるのだという。
ここで一行は気づく。これは熟鮓ではないやん。豚のちまきやないかと。
ミャンマーに豚熟鮓があると聞いたのは、ガセネタやったんか。
翌日市場に行くと、どこかで見た顔がいる。
「ああ、あの豚ちまき作りのおばちゃんやないか」。
挨拶すると気づき、豚ちまきを分けてくれた。
ラードを乗せて蒸しただけに、ご飯はラードまみれである。
恵比寿「龍天門」の「ラードご飯」も青ざめるくらいの、ラードまみれである。
おばちゃんの美味しそうな体型が、この料理を食べ続けるとどうなるかを、実証している。
ご飯は甘い香りがするが、当然しつこい。
そこで上に乗った魚を混ぜて蒸したという黄色いご飯が活躍する。
黄色いご飯は塩気少なく淡味なので、下のラードご飯と食べれば緩和して。程よいバランスとなる。
人気らしく、朝7:30だというのに、「今日はもう売り切れや」と、おばちゃんは。嬉しそうに破顔一笑した。
翌日、「作っているところを見せてくれるおっさんがいるで」という新情報を得て、小屋に向かった。
昼寝から起きてきたおっさんは、眠そうな目をこすりながら始動した。
そして取り出したのは、「豚の血」である。
あの赤い色は、豚の血やったかいな。そりゃ強烈な色になるわけである。
① まずボウルに発色&保存性を高める、硝酸を入れる。
② 袋に入れた固まった豚の血を、徹頭徹尾絞り出す。
③ そこに炊いた米を1合ほど入れ、よくよく混ぜる。
④ 塩をこれでもかと、どさっと入れる。
⑤ 白い魔法の粉を、これでもかとどっさり入れる。
⑥ よくよく混ぜる。
⑦ ざるに10合ほどの炊いた米を広げる。
⑧ そこに⑥を入れ、手に油をつけながら満遍なく、白い米の色が全て赤く染まるまで丹念に混ぜてゆく。
⑨ 手に再び油つけ、おにぎり状にまるめていく。
⑩ その握りを息子がバナナの葉を使って、素早く綺麗につつんでいく。
⑪ これを2日間ほど寝かせ、蒸して完成する。
作っている工程を見ていると、かなり丁寧である。おっさん息子も、米一粒たり無駄にせずしまいという姿勢で、こば折れた米粒を拾い上げながら作っている。
熟鮓ではない。やはり粽である。
真の粽、「血巻き」である
出来上がりの品を一ついただいた。いや正確にはひとくちいただいた。
油感が強く、白い魔法の粉の味が濃く、軟弱な僕及び一行は、二口とはいかない。
おっちゃんとおばちゃんは、随分仕事に違いがあるようだ。
さて熟鮓の方はどうなったかというと、翌朝タウンジーの街の食堂で期せずして出会う。
ネームに比べると、寝かせ方が浅く塩も浅いため、酸っぱくない。
味の淡い普通のソーセージといった感じで、熟れというには、少し早いような気がした。