〜どちらが、好き?〜

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〜どちらが、好き?〜

うなぎなのに、色白のふくよかな女性を思い浮かべた。
愛情をたっぷりとかけられ、伸び伸びと、健やかに育った味がする。

「たいせい鰻」は、鹿児島大隅半島にある家族経営の小さな養鰻場だという。
餌がオーガニックなのはもちろんのこと、サプリメントや脂も与えず、8〜10ヶ月育て上げる。
「うまく見てやれば、病気にはならない」。
そうして丹念に育てているのだろう。
ふっくらとした身を噛むと、肉が花弁のように、はらはらと口の中で舞った。
うなぎのたくましい味わいは感じせつつ、どこかはかなさもある

これ見よがしではない、てらいのない鰻なのである。
一方奥の蒲焼となった「きょうすい鰻」は、18ヶ月かけて育て上げられただけあり、やや体が締まって、迫ってくる。
こちらは、日焼けしたアスリート娘だろうか。
僕は欲張りだから、どちらにも惚れた。

入谷「のだや」にて。