〜「幸せだあ」の仲間入り〜  <京都の平生>30

日記 ,

〜「幸せだあ」の仲間入り〜
カランコロン。
古い喫茶店のガラス戸を開けると、ベルが鳴った。
朝8時なのに、ほぼ満席である。
70代の男性から20代の女性、一人客から4人客まで、様々なお客さんがいる。
そんな店内には、「幸せだあ」という空気が、舞っていた。
そう思ったのは、楽しそうにくつろいでいるからだけではない。
オムライス、ナポリタン、カレーライス、タマゴサンド、ヤキメシと、おなじみの料理がテーブルに置かれ、皆さん旺盛に食べているからである 。
モーニングメニューもあるが、誰も頼んでいない。


しつこくいうが、朝8時である。
「おいでやす」。
サービスは、三角巾を頭につけた、70代の二人のお母さんである。
その一人がコップに水を入れ、おしぼりとともに僕のテーブルに置いた。
「野菜サラダとナポリタン、玉子のせでください。あとでコーヒーも」と、頼むと、
「ナポリタンの玉子のせは、オムライスみたいになってますが、よろしいか?」と聞く。
「はい。お願いします」。
「おおきに」と言って下がると、「スパ玉一つ」と厨房に通した。
わずかに開いた厨房のガラス窓の向こうには、70過ぎのお父さんが見える。
「これはごまドレッシングです。マヨネーズも好きですか?」
サラダを運んで来たお母さんが効くので、「はいっ」と、笑顔で答えた。
マヨネーズ、パルメザン、ハバネロソース、ごまドレッシング、ケッチャップが並ぶ。壮観である。
やがて「玉子のせナポリタン」が運ばれた。
ケチャップがかけられた薄焼き卵がのっているだけで、堂々たる普通のナポリタンである。
僕は卵をめくって、素のナポリタンを食べ、玉子とスパを巻き込んで食べ、そこにケチャップつけたり、チーズをかけたりハバネロかけたり、チーズをナポリタンの下に隠蔽して放置したりなどして様々に楽しんだ。
ベストは、フォークにチーズをかけ、ハバネロソースをふりかけ、それから玉子を絡めながらスパを巻き込んで、大口を開けて食べる。以上である。
香り高いコーヒーを飲んで、「幸せだあ」の仲間入りをし、店を出た。
「おおきに」。
店を出ようとする僕の背中を、お母さんの言葉が柔らかく押した

京都二条「チロル」にて。