〜シリーズ食べる人〜

日記 ,

〜シリーズ食べる人〜
電車でおにぎりを食べる人を見るのは、そう珍しいことではない。
だがその人は、なにかが違っていた。
一個のおにぎりを、なかなか食べ終わらないのである。
食べ始めてから、もう五駅は過ぎていた。
推測するに、30台前半の美人が、ローソンの袋から取り出したのは、厚切り牛ハラミであった。
おにぎりの袋を全部剥かずに、直接おにぎりに手が触れないようにして食べている。
観察して見ると、噛む回数が多い。
僕などは早食いなので、10回ほどでなくなってしまうが、普通は一口20回くらいであろう。
それが数えて見ると、70回も噛んでいるのである。
噛む。噛む。
試してみればわかるが、一口70回は至難の技である。
肥満予防か? 胃腸に働きを促進させ、脳を活性化させるためか。
それとも牛ハラミが固いのか。
顎をよく動かしながら、全力投球で噛んでいる。
その姿勢に立って拍手を送りたくなった。
やがて8駅経ってようやく食べ終えた彼女は、袋をたたんで自分のバックにしまう。
ティッシュで口元を拭き、スマホの自撮りで唇の周りをチェックした。
ローソン袋から一緒に買ったミルキーを取り出して、自分のバックに移行し、小さなボトルを取り出すと、一気に飲み干した。
それはなぜか、「ウコンの力」だった。