<駅弁勝負 第97番>「水了軒」の「汽車弁当」

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駅弁勝負
食い倒れの街、なにわが誇る駅弁、「水了軒」の「汽車弁当」である。
「水了軒」は、JR東海の真綿で首を絞める方式の排除によって、倒産を余儀なくされ、多くの駅弁ファンを絶望のどん底へと落としたが、別の会社の手助けにより、新生した。
名物「八角弁当」も復活し、生前とほぼ同じ味で、喜ばせてくれている。
この「汽車弁当」は、その下に位置する弁当である。
おかずに個性のあるものはない。
幕の内弁当の3種の神器である、焼き魚、玉子焼き、蒲鉾をはじめ、煮豆に煮野菜、塩鮭、鳥の照り焼きと、目新しさはない。
しかしこの一つ一つが、実においしいのである。
出汁卷玉子は、上品な出汁の味が静かに滲み、ほんのりと旨味をまとったコンニャクは、歯ごたえがふやけてない。
高野豆腐は、出汁がちゅっと飛び出て、椎茸は肉厚で、椎茸の香りがきちんとある。
ひろうすを噛んだ時に飛び出る出汁に笑い、しっとりと味が染みたカボチャは、しみじみうまい。
大根なますは、酢がキリッときいてほの甘く、煮豆は、おたふく豆に赤インゲン豆、ウグイス豆の三種か、ほっこりと甘く煮られている、
もちろん、俵型にしきられた、肝心のご飯も、おいしい。
前回惨敗した「笹八」と同じ価格の弁当とは、到底思えない。
ぜひ爪の垢を煎じて飲んでほしい。
あえて苦言を通せば、かまぼこが薄いのと、塩鮭の質だろうか。
とにかく食べていて、気分がいい。
背筋が伸びて、精神が笑い出す。
新大阪で買うなら、八角弁当以外には、他に選択肢はない。
こういう時こそ、勝負を挑んで、勝ち名乗りをあげたい。
しかし新大阪6時57分発という早さのせいか、乗客も少なく、近くの50代サラリーマンは、ドトールのコーヒーのみ、名古屋から乗ってきた50代フリーランス系男性は、マックのフィレオフィッシュといった状況で、勝負を挑む以前の状態であつた。
人生は、なかなかうまく行かないものだ。

238汽車弁当  1150  水了軒

ご飯 2おかず 2価格1箸2特記野菜煮物1ご飯    郷土色か個性点ノスタルジー1総計8点>