「桃とフォアグラ」。

食べ歩き ,

「桃とフォアグラ」。
もう口にしただけで、いやらしい。
フォアグラが、桃を抱きしめるのか。
桃が、フォアグラを誘惑するのか。
もう想像するだけで、いやらしい。
運ばれてきたのは、二体の焦茶の塊だった。
「桃は、しっかり炒め、痛めつけてやります。そうすると香りが出る」。
桃皮が茶色く変色したところの匂いを嗅いだことのある人は知っているだろう。
そこは清純な香りではなく、濃く色香を纏った香りが漂うことを。
そうして生まれた艶香は、フォアグラが持つ脂の甘い香りと抱擁する。
桃はてろんと崩れ、ファアグラはふんわりと崩れ、互いがエキスを交換し合う。
フォアグラには、八角などのエピスがつけられて、二つの物体の逢瀬を鼓舞する。
その時我々は知る。
桃は桃を越え、フォアグラはフォアグラという概念から解き放たれ、甘美な夢となって旅立つことを。
「ラブランシュ」夏のスペシャリテ。