「知ってるかい?水餃子と焼き餃子は包み方がちょいと違うんだ。水餃子は皮がダマになっちゃいけないだろ? ほら口当たりが悪くなる。だからこうやってね端を斜めに包んでやるんだ」。
「32年間餃子作ってっけど、少しずつ進歩してんだよ。この焼き餃子の皮だってね。最初からこんなにカリッとはしてなかったね。それでさ、何度も試行錯誤を繰り返したのさ。
ある日深夜テレビを見てたらね。ダイアモンドの粉つけたフライパンがテフロン加工より優れてるてのを宣伝してたン。その時ぱっと思いついたんだ。そしてやったらこの通り。
え?ダイヤの粉つけてないよ。そしたらこんな値段じゃ出せないでしょ。ガハハハ」。
と「您好」の野本さん。
焼きあがった小ぶりな焼き餃子は、コロンと丸く、香ばしい焦げ茶の焼き色が両面についている。沙茶醤を使ったタレに漬けて口に運べば、「カリッ」。
焼けた皮を噛みしだく音が、響き、脳内にこだまして、体の芯を貫ぬく。「ああ、俺はいま、餃子を食べているんだあ」という喜びに震える瞬間である。
「カリッ」。餃子の皮が弾けると、歯はもっちりと柔らかな皮に包まれ、舌には熱々の汁と、野菜や豚肉の甘みが流れ出す。
皮の存在感に負けない餡の手応え、うまみの濃さ。タレに漬けずとも十分にうまく、次々と端が伸びる。
「カリッ」も、もっちりも汁も餡も、それぞれにたくましく、主張のある焼餃子は、目まいを感じるほどのうまさがある。
お相手は当然冷たいビール。熱々の餃子をほおばり、冷たいビールをすかさずあおる。幸せです。
「您好」の野本さん
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