「ボナセーラ」。
席に着くまで、何人のカメリエーラと挨拶しただろう。
おそらく10数名である。
彼ら全員の笑顔に、ウソがない。
いや少なくとも、ウソを感じさせない。
しかもみなスマートで、お顔も俳優と言っても遜色のない、ハンサムである。
立ち姿も歩き方も、一分の隙がない。
特にベテラン陣がたまらない。
レオンとは違う、イタリア人のダンディズムが、顔に滲み出ている。
ラウル・ボーバかマルチェロ・マストロヤンニ、イタリア系アメリカ男優なら、デニーロかパシーノか。
さらに僕が行くことを知って、ウェルカムの泡は、フランチャコルタ、モンテニサのマルキー(イタリア人が発音すると、勝手にマッキーに聞こえる。冗談であります)
また我々3名に料理を出すときは、3人のカメリエーレが皿を持って一切に出すのは当たり前だが、下げる時も3人が一斉に下げる。
下げる際に女性客が発言中の時は、さりげなく下げに来るのを中止し、会話に敬意を払う。
女性優位が徹底され、連れによると、トイレはきめ細かく、欲しいものがすべて揃っているという。
そしてマダムアニーは、自宅に招いたような温かさに溢れた笑顔と言葉で、挨拶に来られる。
ペアリングコースの4杯で200ユーロを3人で頼もうとしたら、「一つご提案があります。こちらワインはエレガントで素晴らしい状態で、お選びいただいたコースの料理にも寄り添います。もしよろしければ、一本お取りになりませんか?」と、指し示されたのが、このワインである。
つまりペアリングの200×3よりも安く、面白い。
喜んで提案を受けると、ソムリエは嬉しそうな顔をされた。
肉だけでなく、カサゴのたくまし肉体とも合うこと‼️
無理言って二時間で全料理が食べ終わるように、お願いしたら、慌ただしく、スムーズで、コーヒーを飲み終わった時点で、ちょうど115分、完璧である。
お客さんは、どなたも紳士淑女で、特に女性のファッションには、ため息が出る。
帰り際に、ジョルジョ・ピンキオーリ氏と「ヤァ!」のショットをお願いすると、快く一緒に収まってくれた。
そして帰り際には、メニューと料理の本もいただき、ドアをようとした瞬間に、タクシーが目の前に着いた。
厳格ながらユーモアと温もりに富んだ、ホスピタリティに、体と心をほぐされた。
一流とはこういうことを言う。
フィレンツェ「エノテカ・ピンキオーリ」にて。
素晴らしき料理の話はまた後で。
「ボナセーラ」
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