「まったく違う」。
うまいサンマの塩焼きで、猛然と白いご飯を掻き込みたい。
そう思って、七輪で焼いてみた。
パチパチ。
一匹88円の冷凍サンマを、パチパチ焼いた。
脂がそう多くないのか。1匹88円のせいか。
脂が落ちて煙が上がるが、さほどではない。
さあ香ばしい色に焼き上がった、食おう。
傍らには土鍋で炊いた、熱々ご飯、豆腐の味噌汁、キャベツと紫蘇、胡瓜の浅漬け。
完璧である。
皮がパリッと破れ、しっとりとした身が舌に乗る。
焼かれてもまだ、張りのある身が脂の甘みを伝えて、猛然とご飯が恋しくなる。
肝を食べれば、ほのかに甘い。
微かな苦みもあるが、とろっとした甘みが先にあって、こいつがまた、ご飯を呼ぶのだな。ハハハのハ。
一匹88円エライ。
備長炭エライ。
しかしここでは終わらない。
試しに家庭の魚焼きコンロ、ガス火で同じ魚を焼いてみた。
皮はパリッと焼けているが少し根性がない。
そして身は、パサパサで頼りない。
やはりこれは88円だねという味なのである。
そしてなにより驚いたのが、肝である。
苦いのである。
甘みなんてどこにもないのである。
同じ88円なのに。