「はあ? なにいってんだお前」

食べ歩き ,

「はあ? なにいってんだお前」
明らかにそんな顔だった。
サンフランシスコの入管で、答えた時である。
「目的は?」 「観光」。「何日いる?」 「一日」。
ここで第一回目の「はあ?」
「どこから来た?」「メキシコ」「目的は?」 「観光」。「何日いた?」 「一日」。
さらに深い、「はあ?」が、来た。
「やぁ」ならいいけど、「はあ?」である。
観光するのになんで一日なんだよと、顔に書いてある。もし本当に怪しい奴なら、一日なんて言わないだろ。でも、こっちへ来い的空気が漂っているので、たたみかけた。
「いやあ。サンフランシスコは素晴らしいレストランがたくさんある。僕はそこに行く為に来たんだ。もう今夜のレストランも予約してある。ホラこれが予約書。オープンテーブルを使ったよ。メキシコ行ったのもリアルなタコスが食べたかったんだ」と、幸せそうに笑ってみた。
「OK」よかった。「エンジョイ」とは言ってくれなかったけど。

そんなわけでホテルに荷物をぶち込んで、フェリービルディングの「スランテットドア」へと、昼食を取りに向かう。
やはりここのモダンベトナミーズは、味のベースがしっかりしている。そして料理が出来るのが異常に早い。
80席ほどあるのに、注文して左を向いて右を向くと、もう運ばれてくる。
「フォーヴォー」は、レモングラスと少しだけチリを効かせ、豚の薄切りも乗せた特製バージョンで、なにより牛のスープの味に雑味なく、優しい滋味に満ちている。
ここにハーブや唐辛子、紫蘇やもやしを入れこんで、時々ライムを搾りながら味を変化させて、食べ進む。
この「フォーヴォー」は、麺の欄ではなく、スープの欄にあるので気をつけてね。そして麺も面白そうなのがあったので、頼んでみた。
湯葉とビーフンの焼きそばである。鶏肉とパプリカ、ローストしたチリと葱、それに「ビーチマッシュルーム」が入っている。
「ビーチマッシュルーム」とは? と調べると、エノキだの白いしめじだとか出てくるが、この場合は、天然なめこであった。
いや正確に言えば、ぬめりの少ない小さめな天然なめこである。
その食感と湯葉、ビーフンの食感の対比が楽しく、そして味付けは醤油とスープ、隠し味に牡蠣油だろうか。
うま味が強すぎずほどよい穏やかさで、飽きが来ない。この辺りの味のバランスが、この店の優れているところだろう。
しかしビーフン炒めに、なめこ。東京でもやってみよう。