「うな丼が食べたい」

食べ歩き ,

それは2016年7月のことだった。
「いい天然ウナギが入るんです」。
シェフのそんな一言を聞いて、思わず
「うな丼が食べたい」というわがままを口走ってしまった。
しかしここはイタリア料理店であるから、ただのうな丼にはしない。
カリッと地焼きしたウナギには、ジャスミンライスを合わせ、ポルト酒、赤ワイン、フォンドヴォー、金目鯛のフュメ、マルサラ酒を合わせ煮詰めたタレ(ソース)と、卵黄に金目鯛のフュメ、マルサラ酒を合わせたソースを添える。
舌の上で爆ぜる、ウナギの滋味と、口に溶けゆく豊かな脂の甘みを、ソースの深いコクが持ち上げ、ご飯が優しく受けとめる。
それはまさに、うな丼であった。
この挑戦欲と熱意に気を良くして、毎月一回わがままな客による無茶振り会は始まったのである。
六本木「ラ・ブリアンツァ」