<世界の三大珍味>その一キャビア

食べ歩き

<世界の三大珍味>その一
今までキャビアで感動を覚えた料理が二つある。
一つは神戸「bbq」の「キャビアの薪火焼き」であり、一つはパリ「etude」の「キャビアとカサゴのコロッケ」である。
どちらも加熱した料理であるが、「ぬるい」という温度帯の中で、キャビアの卵としての新たな魅力を引き出した、素晴らしい料理だった。
「キャビアは料理人泣かせです。そのままで十分美味しいので、何かしてしまうと余計なことになってしまう。缶を開けた時がおいしい、だがそのまま出したのでは料理ではない。だから僕は使いません」。
あるシェフはこう言った。
しかしこの二つの料理は、キャビアの新しい可能性を照らしていた。
先日もその可能性を感じる、素晴らしい料理に出会った。
キャビアの上に乗った丸いものは、酢橘のゼストを散らしたアボカドチップ。下は、鰹出汁を忍ばせたアボカドクリームである。
一緒に食べた瞬間、体の力が抜けた。
官能を揺する、色気がある。
アボカドのコク。キャビアの卵の甘みと塩気。酢橘の香り。出汁のかすかな旨味。
それぞれを感じながらも、どこまでも丸い。
キャビアは主役ではない。
この小さなカップに収まったすべての要素が、大きな、新しい宇宙を形成している。
それは限りなき優美であり、心を溶かす、美しい共鳴である。
おそらく、どの食材も出汁もこれ以上も以下でもないギリギリの量が、巧みに、精緻に、計算されて組み合わされているのだろう。
妥協も緩みも一切ない、完璧な美がそこにはあった。
「Sézanne」にて。