初めてキムチを食べたのは、小学校6年の時である。
親戚が持って来て、家族がおいしいおいしいと言って食べていた。
「お前も食べるかい?」
箸を伸ばして、食べた瞬間、口はへの字である。
「食べられたもんじゃない」。
臭く、辛く、酸っぱく、味強く、小学6年生の男子には、とても食べられたもんじゃなかった。
「大人は変だ」。
そう強く思ったことを覚えている。
だがいつしか平気となり、好物となった。
以来半世紀以上キムチを食べて来た。
だがこんなキムチは初めてである。
食べた瞬間、「なに?」と、箸を落としそうになった、
味の方向性は同じである。
だが違う。
複雑な旨みが絡み合っているが、どこまでも丸い。
優しい、柑橘のような香りがする。
辛いが、強さが微塵もなく、雑味もなく、味わいが澄んでいる。
そしてなにより、白菜の甘さやみずみずしさが生きている。
キムチを食べるたびに、舌が洗われる。
なぜなのか。
その答えは、次の日に明らかになるのだった。
韓国 チョンクワン尼僧の寺にて