オムレツが夢になる日。

食べ歩き , 寄稿記事

これは「夢」だ、と思った。

口に入れ、舌に滑らした瞬間に、オムレツは卵の甘い香りだけを残して、淡雪のように消えていったのである。

モン・サンミッシェルを訪ねる巡礼者たちのお腹を、なんとか満たそうと考えられたというオムレツは、三個の全卵を徹底的に泡立てることから始まる。

約6分間、キメを均一にするため、 細かく手を動かして整えていく。

細かい気泡で整ったオムレツは、焼かれても縮まない。運ばれると、「早く食べてね」と囁くかのように、皿の上で震えている。

スプーンを刺し持ち上げると、空気を含んだ卵が輝いて美しい。

口に運べば、焼けた表面が香ばしく、噛めば消えて夢となり、あとは甘美な余韻だけが残される。

「ラ・メール」