このTKGには、深い艶がある。

食べ歩き ,

たいけないものを知ってしまった。
「マッキーさん、確かTKGがお好きだったと思い出して、昨夜遊びで作ってみました」。
そういって海津「魚治」の左嵜さんが出してくれたのは、黄身を鮒寿司の飯(いい)に漬けたものである。
真っ白な飯に埋もれて輝く、黄身がいじらしい。
熱々のご飯に乗せてみた。
ゆっくりと潰す。
飯によって水分が抜けた黄身は、すぐには流れ出さず、てろんと米粒にしなだれる。
なにもかけずに掻き込んでみた。
ああ。これはいけない。
黄身は、甘みを凝縮させながら、飯の酸味と香りを抱き込んで、色気を醸している。
真の色気が、甘い誘惑だけでなく、陰にある微かな毒気を伴う酸っぱさがあってこそ成り立つように、このTKGには、深い艶がある。
今まで数多くのTKGを試してきたが、こんなにエロいTKGはない。
トリュフのTKGが西欧的色気だとしたら、ここにはしとやかでしぶとい、日本的色気がある。
それも「魚治」特有の、澄んだ乳酸菌発酵の味がなせる技だろう。
惜しむらくは、簡単にできるものの、この飯を入手することが叶わなく、食べることが極めて困難であるということである。