丸い味噌汁だった。
うま味が甘く、味噌と出汁が仲睦まじく溶け合って、ころりころころと舌を過ぎていく。
「はぁ〜」。一口飲んだ瞬間に、幸せのため息が漏れた。
具は葱に糸島お揚げ。
葱の香りとお揚げの優しい甘みも、味噌汁に寄り添って、自然になじんでいる。「はぁ〜」。笑顔を呼ぶ味噌汁に、目を細めてため息を吐く。
干したアジでとった出汁だという。
「これで出汁をとると、優しい味になるんですわ。ただし赤出しは、鰹節だけどね」。そういって、博多「畑瀬」のご主人は嬉しそうに笑った。
「ちょびっとだけ、白いご飯よそいましょうか」。娘のあつみさんが、嬉しい提案をしてくれる。しかし。
「いや、そのかわりにぬる燗をもう一本」。
このふくよかな味噌汁を肴に酒を飲む。
自家製柚子胡椒を、少し落とす。
「はぁ〜」は、さらに増え、楽しき夜を、深く深く膨らます。