お年でいえば

食べ歩き ,

お年でいえば42歳くらいだろうか。豊満な体に色香をとっぷり宿しているが、育ちの品は隠せない。
なにしろ450gの熊本産天然うなぎである。食べれば、ふっくらとした身に歯が包まれ、脂がゆるゆるとにじみ出る。しかし脂がくどくない。
あっさりとして、身に秘めたほの甘みを際立たせる。
普段うなぎを食べるときは、皮側を舌に当てて食べるが、このうなぎは違う、腹側を舌に当てたほうが、繊細な身の甘みを生かすことができる。そうしてからご飯を描き込む。
一方ご飯と一緒に食べるときは、ご飯にほんの少しだけ山椒をかけ、皮側を下にして載せ、くるりと返してご飯を上にして食べるのがいい。
そうして食べると、よりこのうなぎの品が米の甘みに寄り添い、うな重の幸せここにあり!!と、叫ぶのである。
ちなみにこのうなぎの真ん中はすでに白焼きで食べ、うな重は、頭よりの胴体と尻尾よりの胴体で一匹の3/2である。
それでもこの重に収まりきらず、折り曲がった尻尾がいい。
その尻尾を最後に食べるのだが、脂に邪魔されず、ぐんと舌を煽るような味の濃さがあって、たまりません。椎名町「丸傳」にて。

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