インドでワシも食べた8
朝、オールドデリーの道端から、匂いが誘惑する。
バナナ、マンゴー、パパイヤの甘えるような香り。
レモンやオレンジジュース屋の、甘酸っぱい香り。
なにやら揚げたり焼いたりしている、胃袋くすぐる香り。
熱々チャイの香り。
片っ端から食べたくなった食欲が、走り出そうとする。
「オイちょっと待て」。つまらぬ理性がそれを。押しとどめる。
果物なら大丈夫だろうって？　
連れの２年半在住の女性は、なぜかパパイヤ食べて、一ヶ月も腸が荒れ狂ったという。
そう聞いちゃ、うかつに手を出せない。
でもいい匂いだったので、うかつに手を出しちゃったのが、アルーパラタ。
ジャガイモと小麦粉の焼きパンで、このおっさんが次々と焼き、辛いマサラを塗って新聞紙に包み、ハイよと渡してくれる。
２０円位だったか。
ジャガイモというより小麦の香り満載で香ばしい。濃く、辛いオヤキだ。
少しもっちり。歩き食いに最適である。
こんな顔をしているのは、あまりにも熱く、耐えかねているから。