それぞれの地で

食べ歩き ,

それぞれの地で獲れた旬の食材で、日本料理を作る。
それは、日本料理の芯であるのだろう。
異国文化を柔軟に吸収し、自分のものとしてきた日本人の精神でもあるのだろう。
フランスやヨーロッパの魚介だけを使って寿司を握る、「SUSHI B」の花田さんは、そのことを体現している。
その日に握っていただいた中では、スペインで獲れたというマグロの赤身が、日本でも最近出会えないような爽やかな血の香りがあって我々を喜ばせたが、喜ぶべきはこのネタではないのかもしれない。
例えばラングスティーヌは、ボタンエビや甘エビよりもねっとりとした甘い色気をもって舌に広がり、それがきりりと酢と塩を効かせた酢飯と出会うと、心が焦らされる。
地中海のガンマヌメリィティアネという海老とアイスランド産のウニとの出会いは、日本では味わえない執拗な色気のようなものがあって、酒を呼ぶ。
ルージェ(赤ひめじ)の握りには、じれったいような甘みが酢飯と舞う、新たな感覚があった。
二月にいただいた時より、着実に魚と酢飯のこなれがあって、引き込まれる。
ここにもまた、寿司の未来が息づいているのだ。