サラダは男だった。
葉脈を傷つけられ、塩と赤ワインヴィネガーをすりこめられ、オイルをまぶされる。
「どうだお前ら、まだ生きているか? お前らの力を見せてみろ」。
三谷シェフは、菜っ葉の根性に語りかける。
菜っ葉たちは、その呼びかけに応えて、歌い出す。
腕を天に伸ばし、口の中で、甘み、ほろ苦味、香りを発散させる。
「どうだ人間! これが俺らだ。俺らの命だ」。
これがサラダである。
世に多くある、人間と菜っ葉が馴れ合ったサラダではない。
料理とは、人間と食材との命のやり取りでもある、ということを教えてくれるサラダである。
「レスプリ・ミタニ・ア・ゲタリ」にて。