白身はふんわり崩れゆく。

食べ歩き ,

白身は、固まろうとする寸前の刹那を保ち、白く、ふんわり崩れゆく。
黄身は、加熱されて甘みを最大限引き出されているが液体のままである。
割れば、ゆっくり流れでて、留まる。
白身がてれんと舌を抱きしめて、その中に黄身の甘みが注ぎ込み、一体となりながら消えていく。
添えられるは、香り高いジャガイモのムースとトマトのピュレ。
トマトの酸味やうまみと芋の優し甘みが、脆弱な玉子のありがたみを際立たせる。
たまごと芋とトマトだけなのに、どうしてこんな幸福に満ちているのだろ。
初めて食べるのに、なぜ懐かしい気持ちに温められるのだろう。
名付けてパーフェクトエッグ。
低温で細心の注意を払いながら加熱された玉子は笑っていた。 
オテルリッツ「エスパドン」@パリ。