舌の上で平目が弾け、舞った。

食べ歩き ,

口の中で、舌の上で、平目が弾け、舞った。
分厚い身に歯が入っていく。
見るからに艶かしい白い肉体から、ほの甘いエキスが流れ、舌を包み込む。
「うう」。その圧倒的なうま味に唸り、途端に顔が輝いて、笑った。
低温でアロゼしながら火を通された、ブルターニュ産の平目は、まだ悠然と大海を泳いでいる。
そんな生の気配に満ち満ちた滋味をしたたらせる。
下に敷かれた葉類は、ヴィネグレットで和えたルッコラとほうれん草、春菊。
平目とは違う食感と香りを響かせて、平目の存在を際立たせる。
平目はそのままでも十二分においしいが、青い香りが漂うリペッシュのソースをつけると、ほんのりとした色気を滲ませる。
平目へのこの上ない尊敬を感じる、伊藤シェフの潔い一皿である。
Restaurant L’Archeste @Paris