嬉野の白水産の

食べ歩き ,

嬉野の白水産の氷だししたお茶と、佐賀県の産地と産物が書かれた紙。
テーブルの上には、それだけが置かれていた。
佐賀牛内腿には、黒々としたイチジク、唐津のビオソレイユが抱き合わせられ、糖度8という熊太郎トマトには、テット・ド・モアンヌとタレッジオが、添えられる。
そして縦と横で切り方を変えて食感の妙を生んだ、北波多の新高梨は、丸い酸味を持つスーパー柑橘、元寇の果汁で和えられて、気品が生まれている。
上を覆うのは生白木耳で、その歯触りが梨と対をなして、梨の繊細さを持ち上げる。
続いては豆腐である。
ふうわりと静かに舌の上で溶けていき、豆の香りを膨らます。
その慈愛に満ちたあじわいを、有明海苔のうまみと蒸しウニの甘みが支えている。海苔と一緒に食べれば、優しい優しい豆乳の海を、海苔がたゆたっている。
心に安寧を呼ぶ味である。
次には蒸した根菜や栗を添えた酵素豚のロティ。
噛む喜びに満ちた豚肉の甘い香りを、山椒のような香りがするフランスの胡椒TIMUTが引き締める。
次はスープ。鶏の滋味にあふれたスープは、白い茸の香りが溶け込んで、充足のため息を漏らさせる。
そこから現れる鶏のせせりの食感が心憎い。
最後の締めは、クエの炊き込みご飯。たくましいクエのうまみと米の甘みが抱き合うご飯に、高地で栽培しているという澄んだ辛味を持つ生姜が、清らかな香気を漂わす。
デザートは、洋梨のコンポートに各種煮豆と白水ほうじ茶のケーキ。
「今まで、4千箇所くらい生産者を回りました。その中で今は100人ほどおつきあいしています」。
そう語る大塚瞳さんの料理には、生産者の想いを伝えて少しでも昇華させたいと願う、敬意の気持ちに満ちていた。